問いには、大きく2つの種類があります。ひとつは、現状と「こうなっているはずだった」という期待値のズレから生まれる問い。もうひとつは、現状と「こうありたい」という理想の状態とのギャップから生まれる問い。
前者は問題(Problem)、後者は課題(Issue)として捉えることができます。
そして、
- 問題を扱う問いが、絞る問い(Problem-driven Question)
- 課題を扱う問いが、伸ばす問い(Goal-driven Question)
このうちの絞る問いに焦点を当てます。
✦ 絞る問い(Problem-driven Question)
→現状と期待値のズレを見つけ、その構造を明らかにするための問い。
もう少し言葉を足すと、絞る問いとは、
✦ 絞る問い:「ギャップの正体を静かに明らかにするための問い」
現状と期待値のズレを、どこで・なぜ・どのように・どの程度 生まれているのかを見つけるための問いです。問題の本質は、表面には現れません。その奥にある“構造”を見つけるために、思考を深めていきます。
絞る問いの立て方を整理する
ここで一度、「絞る問いの立て方」を明確にしておきます。単に「なぜ?」と尋ねるだけでは、問題の本質には届きません。
絞る問いの立て方(定義案)
① 現象をそのまま問うのではなく、「ズレの構造」を問う
- 「なぜ売上が落ちたのか?」ではなく「どのプロセスで期待値と現実がズレ始めたのか?」
現象そのものではなく、「どこで」ズレが生じ、「どういう構造で」それが起きているのか に問いを向けます。
② 時間軸を遡り、変化点を問う
- 「いつからズレが生まれたのか?」
- 「その前後で何が変わったのか?」
問題は突然現れたように見えて、実際にはどこかのタイミングから少しずつズレ始めています。
③ 暗黙の前提を問う
- 「私たちは何を当然だと思っていたのか?」
- 「その前提は今も有効なのか?」
期待値は、いつも何らかの前提の上に立っています。その前提がズレていると、問題は繰り返し発生します。
④ 境界を問う
- 「どこからが問題で、どこまでは問題ではないのか?」
- 「このズレは、どの範囲に影響しているのか?」
境界が曖昧なままだと、問題が際限なく広がったり、逆に矮小化されたりします。
⑤ “原因”ではなく“構造”を問う
- 「なぜ起きたのか?」ではなく
- 「どういう仕組みで、そうならざるを得なかったのか?」
誰か一人のミスや一度きりの出来事ではなく、その現象が“起きやすい状態”になっていた背景を探ります。
これらの視点をまとめると、絞る問いは次のような型で表現できます。
「ズレはどこで生まれ、どのような構造によって、どの程度起きているのか?」
絞る問いは「ズレ」から始まる
絞る問いの出発点は、いつも小さなズレです。
- 思っていたのと違う
- 期待していた結果にならない
- どこかが噛み合っていない
この“違和感”は、問題そのものではありません。問題の入口であり、手がかりです。
絞る問いは、このズレを雑に扱わず、「何がどうズレているのか」 を丁寧に言語化するところから始まります。
絞る問いが浅くなるときに起きる“あるある”
あるある1:表層の課題に飛びつく
現象だけを見て、すぐに対策に走ってしまう。
- 「離脱率が高い → UIを改善しよう」
- 「売上が落ちた → 広告を増やそう」
ズレの構造を見る前に、「打ち手」の話に移ってしまうパターンです。
あるある2:原因探しが“犯人探し”になる
「誰が悪いのか?」という議論に寄ってしまい、構造が見えなくなる。
- 「あの部署のせいだ」
- 「あのタイミングの判断が悪かった」
これでは再発防止にはつながりません。
あるある3:前提を疑わない
「そもそもこの前提は正しいのか?」を問わないまま、議論が進んでしまう。
- 「ユーザーはこういうものだ」
- 「このやり方が業界の常識だ」
といった“暗黙の前提”を見直さないことで、問題が固定化されてしまいます。
絞る問いを深めるための小さな習慣
絞る問いは、特別なテクニックというより、日常の中での“問い方の姿勢”に近いものです。
習慣1:違和感をメモする
言語化できなくてもいいので、「なんとなく気になる」をそのまま残しておく。
習慣2:前提を書き出す
「自分は何を当然だと思っているのか?」を紙に書いてみる。前提が見えると、ズレの輪郭も見えやすくなります。
習慣3:境界を描いてみる
「どこからが問題で、どこまでは問題ではないのか?」を図やメモで線にしてみる。
おわりに
あらためてまとめると、絞る問いとは、
「現状と期待値のズレを見つけ、その構造を明らかにするための問い。」
そしてその実態は、
「ギャップの正体を静かに明らかにするための問い」
でもあります。
- 現象ではなく、ズレの構造を問う
- 時間軸を遡り、変化点を問う
- 暗黙の前提を問う
- 境界を問う
- 原因ではなく、構造を問う
このような問いを重ねていくことで、問題の本質は、少しずつ輪郭を持ちはじめます。


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