問いの本質を整理する

003_question ビジネス

企画や戦略を考えるとき、「問い」を使って思考を進めていきます。

けれど、問いはひとつの形をしているわけではありません。同じ「問い」という言葉でも、その役割や向かう方向はまったく違うことがあります。

問いには大きく 2つの種類があると考えています。

ひとつは、現状のズレや違和感から生まれる問い(Problem-driven Question)

もうひとつは、理想や願いから生まれる問い(Goal-driven Question)

この2つは似ているようでいて、思考の本質がまったく違います。まずはその違いを整理してみたいと思います。

問題に対する問い —— 現状のズレから生まれる

最初の問いは、現状の中にある“違和感”から生まれます。

  • なぜこうなっているのか
  • どこでズレが生じたのか
  • 何が前提と違っていたのか

こうした問いは、過去〜現在を扱う問いです。原因を探り、構造を理解し、前提を見直すための問い。思考の方向は「深掘り(Digging)」。問題の本質に近づくための問いです。

理想に対する問い —— 未来の可能性から生まれる

もうひとつの問いは、未来に向かって開かれています。

  • どうすれば実現できるか
  • どんな状態をつくりたいのか
  • 何を増やし、何を減らすべきか

これは未来を扱う問いです。可能性を広げ、選択肢をつくり、理想に近づくための問い。
思考の方向は「創造(Creating)」。未来を描くための問いです。

なぜこの2つを分けて考える必要があるのか

この2種類の問いは、生まれる背景も、役割も、思考の方向もまったく違います。

  • 問題に対する問い → 現状を理解する
  • 理想に対する問い → 未来をつくる

もしこの2つを混ぜてしまうと、原因探しと未来づくりが同時に走り、議論が迷子になります。

企画や戦略の現場でよく起きる混乱は、この“問いの種類の違い”を意識していないことが原因だったりします。

ここでは、よくある混線の例を、構造化して見ていきます。

2種類の問いが混線したときに起きる“あるある”(ケーススタディ)

1.原因を探るべき場面で、いきなり解決策を考えてしまう

分類:Problem-driven → Goal-driven への混線

本来の問い:「なぜユーザーが途中離脱しているのか?」

混線した問い:「どうすれば離脱を減らせるか?」

何が起きるか:

  • 原因が分からないまま対策を考え始める
  • 表面的な改善案だけが量産される
  • 効果が出ない

現場でよく出る発言:

  • 「とりあえず改善案を出そう」
  • 「施策を回しながら原因を探ればいいよね」
  • 「スピード重視でいこう」

2.未来を描くべき場面で、原因探しに引き戻されてしまう

分類:Goal-driven → Problem-driven への混線

本来の問い:「どうすればこのサービスを“もっと好きになってもらえる”か?」

混線した問い:「そもそも今の満足度が低い理由は何だっけ?」

何が起きるか:

  • 未来の議論が現状分析に引き戻される
  • アイデアが広がらない
  • 企画が改善案に矮小化される

現場でよく出る発言:

  • 「まず現状を整理しよう」
  • 「原因が分からないと未来は描けないよね」
  • 「一度課題を洗い出したほうがいい」

3.問いの種類が違うメンバー同士で議論が噛み合わない

分類:Problem-driven と Goal-driven の同時発生

本来の問い:「なぜ売上が落ちているのか?」

混線した問い:「どうすれば新しい顧客層を獲得できるか?」

何が起きるか:

  • 原因を掘りたい
  • 未来を広げたい
  • 議論が平行線になる

現場でよく出る発言:

  • 「話が噛み合ってない気がする」
  • 「どこから話せばいいんだっけ?」
  • 「一度論点を整理しよう」

4.問題の問いを、理想の問いで上書きしてしまう

分類:Problem-driven → Goal-driven の早すぎるジャンプ

本来の問い:「なぜプロジェクトが遅延しているのか?」

混線した問い:「どうすれば遅延を取り戻せるか?」

何が起きるか:

  • 構造が見えないまま精神論の対策だけが出る
  • 根本改善ができない

現場でよく出る発言:

  • 「巻き返していこう」
  • 「気合いで乗り切るしかない」
  • 「なんとか間に合わせよう」

5.理想の問いを、問題の問いで潰してしまう

分類:Goal-driven → Problem-driven の過剰な引き戻し

本来の問い:「どうすればもっと“心地よい体験”をつくれるか?」

混線した問い:「今の体験の何が悪いの?」

何が起きるか:

  • 理想の議論が欠点探しに変わる
  • 創造性が萎縮する
  • 未来の可能性が狭まる

現場でよく出る発言:

  • 「まず課題を洗い出そう」
  • 「現状の問題を全部出してから考えよう」
  • 「理想はいいけど、まずは現実を見ないと」

問いは「絞る問い」と「伸ばす問い」

この2つを、

絞る問い(Problem-driven)

伸ばす問い(Goal-driven)

と呼んでいます。

絞る問いは、現状の奥にある構造を見つけるためのもの。ここでは深掘りが欠かせません。

伸ばす問いは、未来の可能性を広げるためのもの。こちらは発散のプロセスが重要になります。

どちらが良い悪いではなく、どちらも企画や戦略には欠かせない問いです。

おわりに

問いには、世界を変えていく力があります。ただ、その問いがどこから生まれ、どこへ向かうものなのかを理解していないと、思考は簡単に迷子になります。

現状のズレから生まれる「絞る問い」

理想の可能性から生まれる「伸ばす問い」

この2つを丁寧に区別することは、思考の質を整えるための最初の一歩です。

問いを扱うということは、自分の思考の輪郭を確かめる行為でもあります。その輪郭を見つめ直すことで、企画や戦略の精度は自然と変わっていくのだと思います。

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