企画や戦略を考えるとき、「問い」を使って思考を進めていきます。
けれど、問いはひとつの形をしているわけではありません。同じ「問い」という言葉でも、その役割や向かう方向はまったく違うことがあります。
問いには大きく 2つの種類があると考えています。
ひとつは、現状のズレや違和感から生まれる問い(Problem-driven Question)
もうひとつは、理想や願いから生まれる問い(Goal-driven Question)
この2つは似ているようでいて、思考の本質がまったく違います。まずはその違いを整理してみたいと思います。
問題に対する問い —— 現状のズレから生まれる
最初の問いは、現状の中にある“違和感”から生まれます。
- なぜこうなっているのか
- どこでズレが生じたのか
- 何が前提と違っていたのか
こうした問いは、過去〜現在を扱う問いです。原因を探り、構造を理解し、前提を見直すための問い。思考の方向は「深掘り(Digging)」。問題の本質に近づくための問いです。
理想に対する問い —— 未来の可能性から生まれる
もうひとつの問いは、未来に向かって開かれています。
- どうすれば実現できるか
- どんな状態をつくりたいのか
- 何を増やし、何を減らすべきか
これは未来を扱う問いです。可能性を広げ、選択肢をつくり、理想に近づくための問い。
思考の方向は「創造(Creating)」。未来を描くための問いです。
なぜこの2つを分けて考える必要があるのか
この2種類の問いは、生まれる背景も、役割も、思考の方向もまったく違います。
- 問題に対する問い → 現状を理解する
- 理想に対する問い → 未来をつくる
もしこの2つを混ぜてしまうと、原因探しと未来づくりが同時に走り、議論が迷子になります。
企画や戦略の現場でよく起きる混乱は、この“問いの種類の違い”を意識していないことが原因だったりします。
ここでは、よくある混線の例を、構造化して見ていきます。
2種類の問いが混線したときに起きる“あるある”(ケーススタディ)
1.原因を探るべき場面で、いきなり解決策を考えてしまう
分類:Problem-driven → Goal-driven への混線
本来の問い:「なぜユーザーが途中離脱しているのか?」
混線した問い:「どうすれば離脱を減らせるか?」
何が起きるか:
- 原因が分からないまま対策を考え始める
- 表面的な改善案だけが量産される
- 効果が出ない
現場でよく出る発言:
- 「とりあえず改善案を出そう」
- 「施策を回しながら原因を探ればいいよね」
- 「スピード重視でいこう」
2.未来を描くべき場面で、原因探しに引き戻されてしまう
分類:Goal-driven → Problem-driven への混線
本来の問い:「どうすればこのサービスを“もっと好きになってもらえる”か?」
混線した問い:「そもそも今の満足度が低い理由は何だっけ?」
何が起きるか:
- 未来の議論が現状分析に引き戻される
- アイデアが広がらない
- 企画が改善案に矮小化される
現場でよく出る発言:
- 「まず現状を整理しよう」
- 「原因が分からないと未来は描けないよね」
- 「一度課題を洗い出したほうがいい」
3.問いの種類が違うメンバー同士で議論が噛み合わない
分類:Problem-driven と Goal-driven の同時発生
本来の問い:「なぜ売上が落ちているのか?」
混線した問い:「どうすれば新しい顧客層を獲得できるか?」
何が起きるか:
- 原因を掘りたい
- 未来を広げたい
- 議論が平行線になる
現場でよく出る発言:
- 「話が噛み合ってない気がする」
- 「どこから話せばいいんだっけ?」
- 「一度論点を整理しよう」
4.問題の問いを、理想の問いで上書きしてしまう
分類:Problem-driven → Goal-driven の早すぎるジャンプ
本来の問い:「なぜプロジェクトが遅延しているのか?」
混線した問い:「どうすれば遅延を取り戻せるか?」
何が起きるか:
- 構造が見えないまま精神論の対策だけが出る
- 根本改善ができない
現場でよく出る発言:
- 「巻き返していこう」
- 「気合いで乗り切るしかない」
- 「なんとか間に合わせよう」
5.理想の問いを、問題の問いで潰してしまう
分類:Goal-driven → Problem-driven の過剰な引き戻し
本来の問い:「どうすればもっと“心地よい体験”をつくれるか?」
混線した問い:「今の体験の何が悪いの?」
何が起きるか:
- 理想の議論が欠点探しに変わる
- 創造性が萎縮する
- 未来の可能性が狭まる
現場でよく出る発言:
- 「まず課題を洗い出そう」
- 「現状の問題を全部出してから考えよう」
- 「理想はいいけど、まずは現実を見ないと」
問いは「絞る問い」と「伸ばす問い」
この2つを、
絞る問い(Problem-driven)
伸ばす問い(Goal-driven)
と呼んでいます。
絞る問いは、現状の奥にある構造を見つけるためのもの。ここでは深掘りが欠かせません。
伸ばす問いは、未来の可能性を広げるためのもの。こちらは発散のプロセスが重要になります。
どちらが良い悪いではなく、どちらも企画や戦略には欠かせない問いです。
おわりに
問いには、世界を変えていく力があります。ただ、その問いがどこから生まれ、どこへ向かうものなのかを理解していないと、思考は簡単に迷子になります。
現状のズレから生まれる「絞る問い」
理想の可能性から生まれる「伸ばす問い」
この2つを丁寧に区別することは、思考の質を整えるための最初の一歩です。
問いを扱うということは、自分の思考の輪郭を確かめる行為でもあります。その輪郭を見つめ直すことで、企画や戦略の精度は自然と変わっていくのだと思います。


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