問いには、現状を深く理解するための問いと、未来を描くための問いがあります。前回扱った「絞る問い」は、現状と期待値のズレを見つけ、その構造を明らかにするための問いでした。
今回扱う「伸ばす問い」は、その対になる存在です。
伸ばす問いの出発点は 課題。課題とは、現状と、理想とする状態とのギャップのこと。
このギャップを見つけ、理想の輪郭を描き、その可能性を広げていくのが、伸ばす問いの役割です。
伸ばす問いとは何か
✦ 伸ばす問い(Goal-driven Question)
理想と現状のギャップを見つけ、その可能性を広げるための問い。
✦ 伸ばす問いとは
「望む未来の輪郭を描き、その実現可能性を広げるための問い」
絞る問いが「ズレの構造」を明らかにする問いだとすれば、伸ばす問いは「理想の構造」を描く問いです。
伸ばす問いの立て方を整理する
伸ばす問いは、単に「どうすればいいか?」を問うものではありません。その前に、理想の状態を丁寧に描くことが必要です。
伸ばす問いの立て方
① 理想の状態を描く
- どんな状態をつくりたいのか
- 何が実現されていれば嬉しいのか
② 理想と現状のギャップを問う
- 今との違いはどこにあるのか
- その差分は何を意味しているのか
③ 可能性を広げる問いを立てる
- どうすれば実現できるか
- 他にどんな選択肢があるか
④ 制約ではなく「望み」を問う
- 本当はどうしたいのか
- 何を増やし、何を減らしたいのか
⑤ 未来を複数形で捉える
- どんな未来があり得るか
- その中で最も望ましい未来はどれか
まとめると、伸ばす問いは次のように表現できます。
「望む未来はどのような姿で、その可能性をどう広げられるか?」
伸ばす問いが浅くなるときに起きる「あるある」
伸ばす問いは、意識しないとすぐに浅くなります。ここでは、典型的な3つのパターンを、静かなケーススタディとともに整理します。
あるある1:手段から入ってしまう
理想を描く前に、「どうすればいいか?」だけを問うパターン。
<例えば>
新しいサービスの改善会議。
「もっとユーザーを増やしたい」という話題が出た瞬間、メンバーが次々に手段を挙げ始める。
- SNS広告を増やそう
- キャンペーンを打とう
- UIを刷新した方がいい
しかし、そもそも 「どんな状態になれば成功なのか」 が共有されていない。
- 新規ユーザーを増やしたいのか
- 継続率を上げたいのか
- コアユーザーを深めたいのか
方向性が曖昧なまま、手段だけが積み上がっていく。
→ 理想の輪郭が描かれていないため、問いが浅くなる典型例。
あるある2:理想が抽象すぎる
「もっと良くしたい」「もっと使いやすく」など、言葉がふわっとしていて問いが深まらないパターン。
<例えば>
プロダクト改善の場で、「もっと使いやすいアプリにしたい」という意見が出る。
しかし、使いやすさとは何か?
- 操作が少ないこと
- 情報が整理されていること
- 初めての人でも迷わないこと
- ヘビーユーザーが高速に使えること
メンバーによって理想のイメージがバラバラ。
その結果、議論が噛み合わず、「なんとなく良くしたい」という抽象的な話だけが続いてしまう。
→ 理想が曖昧だと、伸ばす問いは深まらない。
あるある3:現状とのギャップを見ない
理想だけを語って、「今との違い」を見ないまま進めてしまうパターン。
<例えば>
チームで「顧客満足度をもっと高めたい」という理想を掲げる。
理想像は明確で、
- 問い合わせが減る
- 自然に口コミが増える
- 長く使ってもらえる
など、未来の姿は描けている。
しかし現状を見ると、
- 問い合わせの多くは初期設定のつまずき
- 口コミは悪くないが量が少ない
- 継続率は高いが、最初の1週間で離脱が多い
という「具体的なギャップ」が存在する。
このギャップを見ずに理想だけを語ると、「とにかく満足度を上げよう」という抽象的な方向に流れてしまい、実際の改善ポイントが見えなくなる。
→ 理想と現状の差分を見ないと、問いが宙に浮く。
伸ばす問いを深めるための小さな習慣
習慣1:理想を言語化する時間を取る
曖昧でもいいので、「こうありたい」を言葉にしてみる。
習慣2:複数の理想を並べてみる
「Aという未来もある」「Bという未来もある」と並べてみることで、問いが広がる。
習慣3:現状とのギャップを図にしてみる
理想と現状を並べて、その間にある「差分」を可視化する。
おわりに
伸ばす問いは、未来を「ひとつの正解」としてではなく、複数の可能性として捉えるための問いです。
- 理想を描く
- ギャップを見つける
- 可能性を広げる
- 制約ではなく望みを問う
- 未来を複数形で捉える
こうした問いを重ねることで、未来は少しずつ、輪郭を持ちはじめます。

コメント