伸ばす問い — 理想の輪郭を描く

005_伸ばす問い ビジネス

問いには、現状を深く理解するための問いと、未来を描くための問いがあります。前回扱った「絞る問い」は、現状と期待値のズレを見つけ、その構造を明らかにするための問いでした。

今回扱う「伸ばす問い」は、その対になる存在です。

伸ばす問いの出発点は 課題。課題とは、現状と、理想とする状態とのギャップのこと。

このギャップを見つけ、理想の輪郭を描き、その可能性を広げていくのが、伸ばす問いの役割です。

伸ばす問いとは何か

✦ 伸ばす問い(Goal-driven Question)

理想と現状のギャップを見つけ、その可能性を広げるための問い。

✦ 伸ばす問いとは

「望む未来の輪郭を描き、その実現可能性を広げるための問い」

絞る問いが「ズレの構造」を明らかにする問いだとすれば、伸ばす問いは「理想の構造」を描く問いです。

伸ばす問いの立て方を整理する

伸ばす問いは、単に「どうすればいいか?」を問うものではありません。その前に、理想の状態を丁寧に描くことが必要です。

伸ばす問いの立て方

① 理想の状態を描く

  • どんな状態をつくりたいのか
  • 何が実現されていれば嬉しいのか

② 理想と現状のギャップを問う

  • 今との違いはどこにあるのか
  • その差分は何を意味しているのか

③ 可能性を広げる問いを立てる

  • どうすれば実現できるか
  • 他にどんな選択肢があるか

④ 制約ではなく「望み」を問う

  • 本当はどうしたいのか
  • 何を増やし、何を減らしたいのか

⑤ 未来を複数形で捉える

  • どんな未来があり得るか
  • その中で最も望ましい未来はどれか

まとめると、伸ばす問いは次のように表現できます。

「望む未来はどのような姿で、その可能性をどう広げられるか?」

伸ばす問いが浅くなるときに起きる「あるある」

伸ばす問いは、意識しないとすぐに浅くなります。ここでは、典型的な3つのパターンを、静かなケーススタディとともに整理します。

あるある1:手段から入ってしまう

理想を描く前に、「どうすればいいか?」だけを問うパターン。

<例えば>

新しいサービスの改善会議。
「もっとユーザーを増やしたい」という話題が出た瞬間、メンバーが次々に手段を挙げ始める。

  • SNS広告を増やそう
  • キャンペーンを打とう
  • UIを刷新した方がいい

しかし、そもそも 「どんな状態になれば成功なのか」 が共有されていない。

  • 新規ユーザーを増やしたいのか
  • 継続率を上げたいのか
  • コアユーザーを深めたいのか

方向性が曖昧なまま、手段だけが積み上がっていく。

→ 理想の輪郭が描かれていないため、問いが浅くなる典型例。

あるある2:理想が抽象すぎる

「もっと良くしたい」「もっと使いやすく」など、言葉がふわっとしていて問いが深まらないパターン。

<例えば>

プロダクト改善の場で、「もっと使いやすいアプリにしたい」という意見が出る。

しかし、使いやすさとは何か?

  • 操作が少ないこと
  • 情報が整理されていること
  • 初めての人でも迷わないこと
  • ヘビーユーザーが高速に使えること

メンバーによって理想のイメージがバラバラ。
その結果、議論が噛み合わず、「なんとなく良くしたい」という抽象的な話だけが続いてしまう。

→ 理想が曖昧だと、伸ばす問いは深まらない。

あるある3:現状とのギャップを見ない

理想だけを語って、「今との違い」を見ないまま進めてしまうパターン。

<例えば>

チームで「顧客満足度をもっと高めたい」という理想を掲げる。

理想像は明確で、

  • 問い合わせが減る
  • 自然に口コミが増える
  • 長く使ってもらえる

など、未来の姿は描けている。

しかし現状を見ると、

  • 問い合わせの多くは初期設定のつまずき
  • 口コミは悪くないが量が少ない
  • 継続率は高いが、最初の1週間で離脱が多い

という「具体的なギャップ」が存在する。

このギャップを見ずに理想だけを語ると、「とにかく満足度を上げよう」という抽象的な方向に流れてしまい、実際の改善ポイントが見えなくなる。

→ 理想と現状の差分を見ないと、問いが宙に浮く。

伸ばす問いを深めるための小さな習慣

習慣1:理想を言語化する時間を取る

曖昧でもいいので、「こうありたい」を言葉にしてみる。

習慣2:複数の理想を並べてみる

「Aという未来もある」「Bという未来もある」と並べてみることで、問いが広がる。

習慣3:現状とのギャップを図にしてみる

理想と現状を並べて、その間にある「差分」を可視化する。

おわりに

伸ばす問いは、未来を「ひとつの正解」としてではなく、複数の可能性として捉えるための問いです。

  • 理想を描く
  • ギャップを見つける
  • 可能性を広げる
  • 制約ではなく望みを問う
  • 未来を複数形で捉える

こうした問いを重ねることで、未来は少しずつ、輪郭を持ちはじめます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました